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鹿児島家庭裁判所 昭和36年(家)373号 審判 1968年7月12日

申立人 永井トシ(仮名)

相手方 沢田ヨシ(仮名) 外五名

主文

一、<イ> 相手方沢田ヨシは、別紙目録中(1)-一、(1)-二、(2)(4)及び(8)の土地並びに(30)の建物を、

<ロ> 申立人永井トシは、別紙目録中(11)から(14)まで、(18)から(20)まで及び(25)の土地を、

<ハ> 相手方串田ハマは、別紙目録中(3)、(5)、(17)、(21)、(26)及び(29)の土地を、

<ニ> 相手方沢田茂春は、別紙目録中(6)、(9)、(22)及び(28)の土地を、

<ホ> 相手方沢田一夫は、別紙目録中(7)、(10)、(15)、(16)、(23)及び(27)の土地を、

それぞれ取得する。

二、申立人永井トシ、相手方串田ハマ、同沢田茂春、同沢田一夫、同木谷秀夫及び同木谷ユキ子は、別紙目録中(1)-一及び(1)-二の土地につき、相手方沢田ヨシに対しそれぞれ所有権持分の移転登記手続をせよ。

三、<イ> 相手方沢田ヨシは、

相手方木谷秀夫に対し金五〇、〇〇〇円、同木谷ユキ子に対し金五〇、〇〇〇円、申立人永井トシに対し金二一、一七七円、相手方串田ハマに対し金二五、七一九円を、

<ロ> 相手方沢田茂春は、

相手方木谷秀夫に対し金四〇、〇〇〇円、同木谷ユキ子に対し金四〇、〇〇〇円、同串田ハマに対し金八、六六九円を、

<ハ> 相手方沢田一夫は、

相手方木谷秀夫に対し金五四、三一〇円、同木谷ユキ子に対し金五四、三一〇円、申立人永井トシに対し金二〇、三七八円、相手方串田ハマに対し金一一、七三九円を、それぞれ支払え。

四、本件手続費用は、各自弁とする。

理由

(審判分割の必要)

申立人永井トシは、父沢田錦四郎(明治一七年六月一五日生)が昭和三一年一〇月一〇日死亡したので、同人の遺産につき相続が開始し、申立人及び相手方六名が相続人となつたが、当事者間に遺産分割の協議が整わないため、昭和三五年一〇月一日遺産分割調停の申立をなした。そこで、当裁判所調停委員会は、昭和四〇年一二月一七日まで前後一一回にわたり調停期日を重ねたが、当事者間に合意の成立をみるに至らなかつたので、当裁判所は、本件につき遺産分割の審判をなすこととする。

(相続人及び相続分)

被相続人沢田錦四郎には、妻ヨシ(大正四年二月一〇日婚姻)と、直系卑属として二女トシ(昭和一二年九月二五日申立外永井富男と婚姻)、四女ハマ(昭和三〇年七月二五日申立外串田利一と婚姻、夫の氏を称する)。、四男茂春、五男一夫並びに昭和一六年一二月二四日死亡した長女ナツ(昭和一〇年三月二九日申立外木谷幸介と婚姻)の子秀夫(長男)及びユキ子(長女)の七人の相続人がある。相続分については、遺言による指定はないから、各自の法定相続分は、相手方ヨシ三分の一、申立人トシ、相手方ハマ、同茂春及び一夫各一五分の二、亡ナツの代襲相続人たる相手方秀夫及び同ユキ子各一五分の一である。

(分割の対象となる遺産)

分割の対象となる遺産は、被相続人が相続開始当時所有していた別紙目録記載の(1)-一及び(1)-二の宅地二筆、(2)ないし(8)の田七筆、(9)ないし(11)の畑三筆、(12)ないし(19)の山林七筆及び(20)ないし(23)、(25)ないし(29)の原野九筆のほか、(30)の建物である。なお、別紙目録記載の(24)の原野は流失し、川床となつているので現存しない。

(遺産の価額及び各自の相続分の価額)

(1)  本件においては、相続人全員は、上記不動産の価額の評価について、専門家による鑑定を希望せず、鹿児島市における昭和四二年度固定資産税課税評価額の六倍をもつて遺産の評価額とすることに合意しているところ、遺産分割につき協議優先の建前をとる現行法のもとでは、その本質は、私的自治に委ねられた生活関係とみるべきであるから、遺産の価額その他審判の基礎となる事項に関してなした当事者の合意は、それが当事者間に著しい不公平をもたらすと認められる場合のほか、裁判所においてその内容を変更することは相当でない。しかして、本件不動産の存する地域においては、一般に固定資産税課税評価額の六倍をやや上まわる程度の価額をもつて売買されていることが認められるから、上記合意価額は平均的な取引価額に近似し、これを審判分割の基礎としても、相続人間に著しい不公平は生じないものというべきである。よつて、本件各不動産(別紙目録記載の(24)を除く。)の鹿児島市における昭和四二年度固定資産税課税評価額に六を乗ずるときは、計算上、別紙目録記載の土地(1)-一及び(1)-二は合計三一八、九六〇円、(2)は二三、七六〇円、(3)は四四、二八〇円、(4)は五四、一二〇円、(5)は五〇、八八〇円、(6)は三一一、八八〇円、(7)は二七三、三〇〇円、(8)は、一一三、二二〇円、(9)は三九、六〇〇円、(10)は三三、〇〇〇円、(11)は、四六、二〇〇円、(12)は六、六〇〇円、(13)は五六、一〇〇円、(14)は二六、四〇〇円、(15)は四九、二七二円、(16)は三九、三七二円、(17)は二一、一二〇円、(18)は二三、七六〇円、(19)は四一、一六〇円、(20)は四三、〇二六円、(21)は八六、〇五八円、(23)は一一、四七二円、(23)は八、六〇四円、(25)は三、八二二円、(26)は二八、六八六円、(27)は二五、八一二円、(28)は一四、三四〇円、(29)は一一、四七二円、同目録記載の建物(30)は三五八、三八〇円となり、以上の(1)-一ないし(30)の価額を合計すると、本件遺産の価額の総額は、二一六四、六五六円となる。

(2)  次に、各相続人の受くべき相続分の価額を算出するため、上記遺産の価額の総額に、前記各相続人の相続分を乗ずると、

(イ)  相手方ヨシ………七二一、五四四円

(ロ)  相手方茂及び同ユキ子………各一四四、三一〇円

(ハ)  申立人トシ、相手方ハマ、同茂春及び同一夫………各二八八、六二三円

となる。なお、各相続人はいずれも特別受益分はない。

(遺産分割の方法)

本件遺産分割については、下記に従う。

(イ)  相手方ヨシ、同ハマ、同茂春及び同一夫は、いずれも農業に従事しているので、各自の希望が他の相続人のそれと競合しない限り、それぞれ希望する不動産を取得させる。

(ロ)  申立人トシは、夫富男が洋服商を営む非農家であるから、主として山林及び原野を取得させる。但し、同人が取得を希望する別紙目録記載(11)の畑は希望が競合する相続人がないので同人に取得させる。

(ハ)  同一の不動産について取得の希望が競合するもの(別紙目録記載(1)-一、(1)-二及び(10)については、ヨシ及び一夫、同(5)についてはヨシ及びハマ、同(18)及び(19)についてはヨシ及びトシ、同(29)についてはハマ及び茂春が取得を希望)のうち、別紙目録記載(5)、(18)、(19)及び(29)については、各相続人の相続分を考慮し、該土地を取得させなければ、相続分の価額に達しないと認められる相続人に、同(1)-一、(1)-二及び(10)については現実に管理又は占有している相続人にそれぞれ取得させる。

(ニ)  相手方秀夫(石材運搬業、非農家)及び同ユキ子は、いずれも従前から本件不動産の取得を希望していないので、同人等に対しては不動産を取得させない。

(ホ)  不動産を取得しない相続人(相手方茂及び同ユキ子)及び不動産を取得してもその価額の合計が相続分の価額に達しない相続人(申立人トシ及び相手方ハマ)に対しては、相続分の価額をこえて不動産を取得する相続人(相手方ヨシ、同茂春及び同一夫)から、その代償として金銭を支払わせることにより精算することとする。なお、債権者となる各相続人の受くべき金銭は、複数の債権関係に分割することにより、なるべく債権の価値を均質ならしめるようにする(上記の計算関係は、別表精算表参照)。

(手続費用の負担)

本件手続に要した費用は、相続人各自の負担とする。

よつて、主文のとおり審判する。

(家事審判官 橋本享典)

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